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70年前の母と私の遺物が見つかった

長辻󠄀

いや正式には私の場合は過去のもの

それは「へその緒」つまり臍帯

私と母が繋がっていた証だ

父の名前と年齢

母の名前と年齢

出生地はもう使われていないが

中河内郡松原村

体重一×二四十匁(もんめ)

と書かれている

一は1貫目

江戸時代の重さの単位と書かれている

1貫目は3.75Kg

1000匁で1貫

240×3.75g=900g

3750+900=4,650g

4650gの赤ちゃんなんて今はもういない

どれだけ大変な目をして生んでくれたのだろう

生年月日とその時間

午前5時と書かれている

そして最後に産婆「松村スヱ」

と書かれている

スヱさんに私が取り上げられたのが分かる

私の長男のへその緒は桐の箱に入っていたが

私のは表に寿

御臍帯納と書かれ

真ん中には鶴の姿が描かれている厚紙で作った箱である

脱脂綿でくるまれ小さな遺物は当初グロテスクにも思われた

しかしよく見てみると

やや細いタコ糸で縛られた干物のようだ

これが実の母と私の唯一の証

証拠品でもある

生きていた母の遺物

また母に会えたような錯覚があった

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